Yamaha FP-300MNにString Butler V1を装着

2020年にここでHeadway HCF35S ANというアコースティックギターを中古で買い、ワンツースリーサウンドのオリジナル貼り付けタイプピックアップを付けてエレアコ化して使っていることを書いた。

長らくこのギターを出しっぱなしにして仕事場の脇に置いて気が向いたらすぐ手に取って弾ける状態にしていたが、今年の初夏くらいだろうか同じ様に出しっぱなしにできるエレガットが欲しくなり、Yamaha FP-300MNというナイロン弦ギターを買い、前出のHCF35S AN同様にオリジナル貼り付けタイプピックアップを仕込んでみた。

FP-300MNというギターは、台湾のYamahaが作っていたギターのようでHCF35S AN同様にトップは単板(米杉)だが、それ以外の部分はサイドバックがラミネートのローズウッドだったり多分ナットとサドルがプラスチックだったりと廉価版ギターとして値段相応な感じの仕様のギターだ。2001年発売当初の定価が4,3000円で実売は4万円弱という感じで売られていたらしい。アコギのヘッドとペグ、ブリッジをナイロンギター風に変更したアコギとクラシックギターのハイブリッドの様なギターになっているギターで、当時はそういう需要が送出できると期待されていたのだろうがあまり売れなかったようで中古でもそんなに見かけない。なので、逆に中古相場は少し高くなっていたりする。

買った中古では、まずペグがYamahaのオリジナルでなくてどこかの安い練習用クラシックギターのペグに交換され、Fishman Sonitone VT-1だと思われるサドル下のピエゾピックアップが追加されていた。このピックアップを追加する際にサドルを交換したようで、オリジナルではナット同様にプラスチックだったと思われるサドルはTUSQだと思われるサドルに交換されていた。

このギターのペグを安いがGotoh製ペグに交換し、ナットとサドルを牛骨に交換し、マイクを前述のコンタクトマイクに交換して使っている。

音についてはペグ、ナット、そしてサドルを交換したことでかなり良くなったが、まぁ値段なりという感じの音がする。非常に弾きやすいので不満はないが、今後もメインで使うかどうかには迷うところだ。

個人的に一番気になったのが、ナットからペグへの弦の角度だ。通常のクラシックギターの場合でもナットからペグにストレートで弦を巻き取れることはないと思うが、このギターでは構造的にナットからペグへ向かう弦の角度が急なのだ。これは一般的なクラシックギターなら52mm程度はあるはずのナット幅が、このギターでは48mmしかないことと無関係ではあるまい。ナット幅が狭いためナットからペグへの弦の角度がより急になるのだと思う。

この写真は真正面から撮影していないのでわかりにくいと思うが、ナットからペグに向かって弦がまっすぐに伸びていないことはわかると思う。クラシックギター(ナイロン弦ギター)は、程度の差こそあれ元来がこういうものではあるのだが、昔からこれが美しくないと思ってしまうのだ。
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このナットと弦の角度をストレートに近づけて見た目を改善できないかと考えた末に見つけたのが、
String Butler V1オールブラックという製品だ。

このString Butlerシリーズの本来の目的は、ナットからペグへ弦の角度が付いているとナットと弦の間に偏った摩擦が生まれるため、エレキギターでチョーキングやビブラート、トレモロアームなどを使った際にチューニングが狂うという問題を解決することだ。実際に効果があるらしいことは、YouTubeに検証動画がいくつもアップロードされていて分かる。

String Butler V1オールブラックを使えば見た目の問題が少しは改善すると思うが、この製品はエレキギターを念頭にした製品であり、ナイロン弦のギターに問題なく取り付けられるのか不安があった。買って試せば良いことではあるが、過去に何か事例がないかドイツのメーカに問い合わせたところ試したことはないが取り付け自体は問題ないのではないかという答えだった。

なので、試しにドイツのメーカに直接3個発注し、その内の1個をFP-300MN取り付けてみた。

String Butler V1はトラスロッドカバーを外してそのネジ穴を流用して取り付けることが想定されているので、本来ならギターに改造を施す必要がない点がウリだ。効果がなかったり、気に入らなければ外してトラスロッドカバーを元に戻せば良い。

しかしFP-300MNのトラスロッドはサウンドホール側で調整するようになっているのでヘッドにはトラスロッドカバーがないから、String Butler V1を取り付けるにはヘッドにネジ止めしなければならず新たにネジ穴が開くことになる。高級なギターなら間違いなく躊躇する改造だし、自分も10万円以上のギターでこの改造を施す勇気はない。

そのため、まずはString Butler V1の裏面全体に比較的に強力な両面テープを貼ってヘッドに接着してみた。触ってみても微動だにしないのでしっかり接着できたことを確認して弦を貼り直して音を出すと、音量は落ちて薄いペラペラな音になってしまった。見た目は期待通り改善したのだが、音が劣化しては使い物にならない。メーカには試験した結果として報告すると、なんと「String Butler V1は、ネジ止めしないと音は劣化すると思う」という回答が戻ってきたのだ。

そこでFP-300MNは安価なギターだし中古で買って既に改造も加えているわけで、今更ネジ穴の一つや二つはどうってことないやとネジ止めしてみると、何と生鳴りそのものが良くなった、つまり音量が大きくなったと思う。そしてミッドレンジから少し低音に向かって倍音が増えたのか音に厚みが出たようだ。

下の写真がString Butler V1をネジ止めした状態だが、ナットからペグ側へ出る弦の角度がストレートに近くなり、見た目的には満足な結果が得られたと言える。
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メーカに聞いたところ、どのString Butlerでも取り付けると程度の差こそあれ必ず音は変わるそうだ。それが良い方向に変わるかどうかはギターによるので、今回は運が良かったのだろうという話だった。

元々は変な角度でヘッドに接触して損失していた弦振動がString Butler V1のポストからヘッドにネジ止めして密着しているString Butler V1本体を経由してネックへと伝わっていくことで音が変わるというのはありそうなことだ。しかも個人的な感想だが、音は良い方へ変わったと思う。

String Butlerシリーズは安い製品ではないので誰でも気軽に試せるわけではないと思うが、私のようにナットからペグへの弦の角度が気に入らない人や、大幅な改造をせずにアコギやガットギターの音の改善を期待したい向きは一度試しても良いのではないかと思う。ちなみにMartin系のヘッド形状にはString Butler V1が収まらないので、String Butler V5か
String Butler V3を試すことをお勧めする。メーカでは、効果が出る保証はないが試すならString Butler V3だろうと言っている。

なお、中国の格安通販モールにString Butlerを名乗る製品、あるいはString Butlerとそっくりの製品があるが、全て偽物なので注意してほしい。メーカでは、中国のモールに出品していないし、許可も出していない。仕上がりがいい加減で部品の欠品もあるので、工場流出品で冴えないので絶対に買ってはいけない。