カスタムヘッド制作の勧め

最新改訂日付:99/9/13(未だ工事中)

このページは、まだ下書き段階です。完成するのはいつになるかは分かりませんので、ご注意ください。内容に関して質問などあれば、GI Joeに代表される12インチアクションフィギュアのメーリングリスト、Smokey Joe's Cafeにて質問してみてください。内容に関する個別の取い合わせには、完成するまで対応できないと思いますので。

後藤啓次


■はじめに

GI Joeやバービーに代表されるアクションフィギュアや着せ替え人形を集め始めると、どうしても同じ顔が重複する。それでもバービーやジェニーなら、植毛されているので髪の色違いや長さ違い、髪型違いなどが続々と発売されているから、それなりに飽きない。また、アイプリントが微妙に違ったり、肌の質感や色合いが違ったりしてるものも多くて、同じ顔でもそれなりのバリエーションであると納得することができる。

しかしGI Joeやその互換フィギュアの場合は、そうもいかない。せいぜい目と髪の塗り色が数種類あるだけで、同じ顔の重複を避けられない。また海外のアクションフィギュアの場合、結構日本人の好みに合わない顔というのも多く存在することは否定できない。つまり気に入らない顔が手許で重複するという最悪のケースもまま発生する。

従って、コレクタが自作のヘッドと既存のヘッドを取り替えたオリジナルのカスタムフィギュアを制作したいという考えを持つのは、至極当然の成り行きと言えよう。

この原稿では、そんなコレクタが、自分の手で、家庭で、趣味としてカスタムヘッドを制作する際の手引きを目指している。とはいえ、完全に初心者向けという内容にはなっていない。内容がおおざっぱで分からないから、もっと詳細な解説が欲しいと思う読者は、上記の通りSmokey Joe's Cafeにて質問してみて欲しい。

なお、この原稿で使うボディは、オリジナルGI Joeボディと完全互換の米Cotswold(コッツウォルド)社のElite Brigade(エリートブリゲード)のヘッドレスボディを前提としている。このボディは、Cotswoldから1ヶ、3,000円以下(送料別)で購入できる。なおCotswoldでは、一度にたくさん買うと値引きしてくれるので、多めに購入しておくことをお勧めする。

もっとも、ここで解説する方法は汎用性があるので、一度憶えてしまえば、異なるボディに対しても応用が利くはずだ。実際、クラシックコレクションやHall of Fameなどのボディについても言及しているので、参考になれば幸いだ。

なお、この原稿執筆中に、カスタムヘッドを“きちんと”制作することは、単に趣味としてヘッドバリエーションを増やしたいだけの一般コレクタには、かなり面倒であることを痛感した(つまり自分でも、面倒になってきた)。そこで、とにかく既存ヘッドを複製でもして、バリエーションを増やしたいというコレクタが、最低限の材料や器具で、労せずにカスタムヘッドを制作する方法を探して、今現在、これが最良という方法に行き着いたので、とにかく簡単にカスタムヘッドが欲しい、あるいは過去にキャストやシリコンを扱ったことがないコレクタは、まずはこちらを参照してみて欲しい。

ところでこの原稿は、元々は単行本にでもしようと考えていた長大なネタを縮小したものであり、もし出版なり転載なりに興味を持った出版社/編集部でもあれば、気軽に筆者にメールにて相談して欲しい。

■ヘッド素材の選択

カスタムヘッドを夢見て最初にイメージするのは、比較的柔らかい素材であるソフビによる制作だろう。特に日本人は、タカラの着せ替え人形に代表されるソフビヘッドに親しみがあるし、またGI Joe互換フィギュアとして名高いElite Brigadeのソフビヘッドなどを見ると、ソフビヘッドは比較的簡単に安価に製造できるような気がするのではないだろうか。

ソフビ
プラスチック

ソフビのヘッドは柔らかいので、指で挟むと容易に変型する。柔らかいから、ボディへの着脱が容易である。なおこのヘッドはCotswoldのVinceだ。

プラスチックのヘッドは硬いから、指で挟もうが変型しない。力を入れ過ぎれば破壊されるだけだ。硬いため、ボディへの着脱が困難になる傾向にある。なおこのヘッドはMr. KのThe Four Headsの1つ、J. Meyerだ。

ところが、実は家庭で個人がカスタムヘッドを製造する場合、ソフビは最も扱い難い素材なのだ。詳細は省くが、電銅鋳というメッキを行う技術と機材が必要だし、高温の油も使うし、またソフビの原料(ゾルと呼ぶ)自体が有毒(とまでいかなくても危険である)だという認識を持った方がよい。そこで、早々にソフビは諦めて、キャストを使うことにしよう。

キャストというのは、簡単に言えばプラスチックだ。ちょっと専門的に言うと、無発泡ポリウレタンという。多くの読者は、ガレージキットやスクラッチフィギュアなどという言葉を聞いたことがあると思うが、その時完成品を製造する際に使うプラスチックがこれで、俗にキャストと呼んでいるわけだ。

キャストの利点は、少量生産であれば、複製製造が容易に可能なことだろう。それとソフビに比べて原形のディテールを再現しやすい。決して安くはないのだが、以前に比べると比較的安価になったし、ホビー雑誌の広告を見ると通販をしているメーカーもあるので手に入りやすい。種類も豊富だし、また家庭で特に危険もなく扱えるのもメリットだ(だからといって、全く安全というわけではない)。

なお複製を造る必要がないなら、粘土で一個づつ製造して彩色する手段もある(子供の頃に紙粘土で工作したのと同じ方法だ)。この方法では、ヘッドレスのボディのネック部分に、直に粘土でヘッドを盛りつけていけばよいので、ヘッドとネックの装着部分について特別に造作を施す必要がないため非常に楽だ。ただし粘土は結構重いので、重心が頭に集中してフィギュアのバランスが悪くなる欠点がある。さらに、時間と共に乾燥して収縮したり、割れたり、劣化する点が難点。バランスが悪いため倒れ易くなり、結果、壊れる可能性も高い。もっとも壊れたらまた造ればよいわけで、やはり有効な方法の1つではあるだろう。

粘土
この写真は粘土(ファンド)で制作した1/6スケールの日本人ヘッド。小学校の図工の時間に紙粘土で自分の頭を制作した経験があれば、あれの小さいのだと思えばよい。これに塗料を塗れば、立派なカスタムヘッドの出来上がりだ。

なお、個人でカスタムを趣味にしているコレクタに人気が高い粘土というと、ファンドが有名で、最近は抗菌ファンドなどという製品も出ている。ちょっとした模型屋にでも行けば、大抵は売っているので手軽に入手できる。最近では、プロも使っているスカルピーなどの素材もあり、粘土の替わりに使用できる。スカルピーはポリマー粘土と呼ばれるタイプの粘土で、ねっとりとした造形に仕上がるのが特長で、反面、ザクっとした荒っぽい感じを出すのには向かない。スカルピーは、いつまでも柔らかいという利点がある一方、硬化させるためにはオーブンで焼かなければならない。また衣類などに付くと、PERK!のような強力な洗浄液でないと取れないことがあることから、ごく普通の素人が、カスタムヘッドを制作するには向かないと判断して、今回使用する素材の候補からは除外した。またスカルピーと並んでプロが使う材料にワックス(蝋)もあるが、こちらは入手がスカルピーやファンドより難しいことと、専用の道具などを使うことが前提であるなど使い勝手の問題で個人が使うには向かないと判断した。

で、キャストを使ってカスタムヘッドを制作するステップを簡単に書くと、

  1. 粘土でヘッド原型を造る。
  2. 原型からシリコン型を取る。
  3. シリコン型にキャストの原料を流し込む。
  4. キャストが固まったら抜き取る。
  5. 彩色する。
  6. ボディに装着する。
  7. 必要なら3〜5を繰り返して、複製を造る。

これで完成だ。簡単でしょ。これ以外にも色々な方法でキャストを使ってカスタムヘッドを造ることができるが、とりあえず、上記が標準的なステップだと思う。以降の章では、このステップに沿って説明をしていこう。なお読者の中には、キャストを使ったヘッド制作は経験も知識もあるが、ヘッドとボディ側ネックとのジョイント(接続部)の構造で悩んでいるという方がいるだろう。そんな場合は、途中の章はスキップして、最後の「後藤式カスタムヘッドジョイント」の項だけを参照してもらえばよい。

■用意する材料と道具

非常に大雑把に言えば、以下のような材料と道具があれば、カスタムヘッドは作製できる。
造形用粘土

ホビーショップに行くと、色んな種類のものを売っている。写真は私が使っているファンド。

彫刻刀

小学生とかが使うようなやつが、1セット揃っていればよい。

スパチューラ

細かい造作を施すために使う道具。色んな種類があるが、この写真のものはオールマイティな感じの典型的な製品。

油粘土

シリコン型を取る際に、原形を半分埋めてしまうために使う。普通の油粘土でよい。なお品質はあまり関係ないのだが、粘土原形にこびりついたりしてはいけないので、ベト付きがないものがよい。写真のは、ほいく粘土で、粘土原形に着かないのでお勧めだ。なおシリコンに触れた部分が劣化するので、基本的に使い回しはできない。

楊子など

油粘土に埋めた粘土原形と粘土の間に隙間があってはならないので、その隙間を埋めるために楊子のように細い棒を利用する。

ボール紙など

原形を埋めた油粘土を囲む壁を作る。プラ板でもよいが、私の経験ではプラ板だと油粘土が吸着してしまい剥がすのが面倒なので、ボール紙でよいだろう。

シリコン

粘土原形からシリコン型を取るためのシリコン。ホビーショップに行けば売っているはず。またホビー雑誌でも通販している店の広告は簡単に見つかる。

ボール

シリコンは高価だし、空気と湿気に触れて劣化するので、缶から素早く出して、正確な重量をはかるための容器として、プラスチックのボールなどを使う。写真は、私の趣味から多き目の軽量カップなのだが、注ぎ口の付いたボールのが使い勝手はよい。

量り

シリコンとキャスト液を正確に量るための量り。なおカスタムヘッドは小さいから、キッチンスケールのようなものでOKだ。

剥離材

シリコン型を取る場合、油粘土とシリコン、そしてシリコンとシリコンの接触面に剥離材を塗布する必要がある。特にシリコンとシリコンは、容易に融合してしまうので剥離材がちゃんと塗布できていないと、そこで一貫の終わりになる。写真は床用ワックスだが、乾いて膜ができるものなら何でも使えるようだ。

キャスト液

シリコン型に打って(つまり注いで)、完成品を作るためのプラスチック原料。AとBという液体で、これを適切な比率で混ぜると、高温を発しながら急速に硬化する。なお、比率が正しくないと、ちゃんと出来上がらない。ホビーショップに行けば売っているはず。またホビー雑誌でも通販している店の広告は簡単に見つかるが、種類によって仕上がりが柔らかかったり、堅かったり、色や光沢が微妙に違ったりする。

紙コップ

キャスト液AとBを正確に取り分けるためのコップ。プラスチックコップでもよいが、多分、一度使うと二度とコップとしては使えないので、使い捨てのために紙コップがお勧めだ。なおウレタンやスチロールのコップは溶けてしまうので、使ってはいけない(全く使えないという意味ではない)。

プラ棒など

キャスト液AとBを手早く混ぜるための棒。品質には全く意味はないから、ゴミからリサイクルしよう。

ゴムバンドなど

シリコン型をぴったり合わせて押さえるためのバンド。強力な輪ゴム以外に、マジックテープ方式のバンドも使える。なおバンド方式は、シリコン型を微妙に変型させるので、板とクランプを使った方が無難ではある(後述)。

シリコン系スプレー

シリコン型とキャストが触れると、シリコン型が劣化する。そのまま複製を作りつづけると、3ケ位しか複製できない。そこでシリコン型の内側にシリコン系のスプレーを塗布すると、キャストとの剥離材となり、劣化がある程度抑制できる。大体、10ケの複製に耐えるとされる。上の写真は私が使っていたシリコンアクリル系防水スプレー(スキーウェアとかに塗布するやつ)だが、一応、用はなしていたのだが、防水性能のためか、べとつく感じで、キャストが硬化不良を起こすことがままあった。やはり下のような、シリコンスプレーのがよい。こちらはホームセンターで300円くらいで買った。

紙やすり

粘土原形とキャストして出来上がったプラスチックヘッドの表面仕上げ用の紙やすり。ホビーショップに行くと色々と売っている。番手(やすりの荒さ)について、よく分からなければ、初心者用に何種類かセットになっており、細か目の番手の多いものを買えばよい。

サーフェサー

プラスチックヘッドにペイントする前に表面処理/仕上げ用に使う。

パテ

キャストには、どうしても小さな気泡を防ぎ切れないという弱点がある。そんな場合、気泡をプラスチックで埋めるのだが、最も簡単な方法がパテを使う方法だ。写真は半練り状態で入ったチューブだが、取り扱いが楽な固形のものもある。種類も凄く多いので、色々とトライしてみると気に入る製品があるはずだ。なおパテは基本的に毒だから、取り扱いには注意が必要。手に付いたままにしておくと、体に悪いので、手に剥離材としてメンタムを塗りつつ作業する人も多い。剥離材というか、手を水で濡らしていればOKという製品もある。

プラスチック用ペイントとブラシ

プラモデル用のカラーペイントとブラシ。ホビーショップに行けば、色々と売っている。なお本当に高品質なものを求めるなら、ブラシは筆でなくエアブラシが必須。

■ヘッド原型を造る

前述の通り、ヘッド原型は粘土で造る。粘土は、前出のファンドがよいだろう。硬くなりさえすれば、どんな工作用の粘土でも構わないが、ファンドは比較的手に付かないので扱いやすい。まずはGI JoeやElite Brigadeのヘッドを手許に用意して、大体同じサイズになるようにヘッドを造るのだが、できれば事前にサンプルとするヘッドを採寸して数値を把握しておいた方がよい。というのもできあがったヘッドが大きすぎたり小さすぎたりすると、着せ替えができなかったり、帽子がかぶれなくなったりするからだ。従って、首回りと頭の周囲のサイズは特に重要だ。

下は私がオリジナルGI Joeをノギスで採寸したものだ。信頼できる精度は、小数点以下1桁までだが、レプリカを作るわけではないので、これで十分。この図面を横に置いて、カスタムヘッドを採寸しつつ制作すれば、オリジナルJoeと並べても違和感のないサイズのヘッドが出来上がる。

オリジナルGI Joeの正面寸法
オリジナルGI Joeの側面寸法

後は自分の好みの顔をコネコネし、彫刻刀で削り、また粘土を盛り付けし、削り、コネコネし... といった具合に好き勝手に作ればよい。

余談だが、まずは頭のない顔と側頭部だけを作り、完成したら、後頭部と頭頂部を付け足すようにした方が、バランスよくできあがるようだ。つまり、

さてさて、ヘッド原型を造る際に、多くの方が悩むのがボディ・ネック側とのジョイント部分の構造だ。これは非常に難しい点で、実際に作り始めてみて分かる問題点も多い。

まずボディ・ネック側の構造をみると以下の図のようになっている。

で、既存のヘッドの断面図はこうだ。

そして、これを装着してみると、こうなる。

つまり以下の図の○の部分が密着して装着されていることが分かる。

ぱっと見には分からないが、この部分の設計には2つの目的がある。以下の図を見て欲しいが、ヘッドがネック部分に密着することで、まずヘッドの回転に合わせてネック部分も回転すること、もう1つがヘッドが上下にぐらつかないことだ。

図1/2

つまりカスタムヘッドにおいても、この2つの目的が達成できるヘッドが理想となる。我々のカスタムヘッドでも、この目的が可能な限り達成できるようにするつもりだ。

ところが、粘土で既存ヘッドの構造を再現しようとすると、それが至難の業であることがすぐ分かる。なぜなら、まず粘土は手で成形するので、寸分違わず円を造ったり、凹凸を造ったりすることがほぼ不可能なのだ。実際に手で似たような形状を造ると、せいぜい下図のような感じにしかならない。ここで挫折するコレクタも多い。

立派な工作機械があれば、粘土に対して精密に造作を加えることができるかも知れない。あるいは、ここは無視してヘッドの首部分は穴のない状態にしておいて、キャスト・ヘッドが完成してから機械で造作を加えるのも賢いやり方だ。しかし、多くのコレクタはそんな機械は持っていないし、家庭でそんな大仰な機械を使うのもお勧めはできない(もちろん不可能ではないし、ホビー用の工作機械でも、大変だが可能ではある)。そこでとりあえず、ジョイント部分の構造は無視して、次のステップへ進もう。

なお読者によっては「上図の程度で、ぐらぐらするかも知れないけど、とりあえずはボディには装着できるのでOKでは?」と考えるかも知れないが、実際には、シリコン型を取る際に問題が生じる。というのも、下図にあるように、首の穴の内壁に少しでも凹凸があったり、皺があったりすると、シリコンが入り込んで抜きづらくなる。最悪の場合、シリコンが抜けず、ちぎれる可能性があるのだ。

図1/2

■シリコン型を取る

粘土のヘッド原型ができたら、シリコン型を取る。この方法はいくつかあるが、ここでは油粘土を使う方法を採用しよう。原理は非常に簡単で、下図のようになっている。

図1/2/3

つまりヘッドの前半分を最初にシリコン型に起こし、次に残った後ろ半分を別のシリコン型に起こす。ご推察の通り、この2つのシリコン型を合わせて、中にキャストを流し込めば、ヘッドの複製ができあがる寸法だ。なお、この前後半分をシリコン型に起こす順番は、常に前が先で後ろが後だ(これについては後述する)。

ここで注意することがいくつかある。

まずヘッドのパーティングラインをきちんと決めることだ。シリコン型を合わせてキャストを流すと、どうしてもシリコン型の合わせ目にシリコンが流れ込んで、若干のバリができあがる。このバリは最後に削ったり切り落としたりするのだが、これが変な場所にあると綺麗に落とせなかったり、目立ったりする。そこで基本は前後の中心にパーティングラインを設定するのだが、耳などについては出っ張っている部分の縁にそってパーティングラインを設定する。そして下図のように油粘土は、このパーティングラインに沿ってヘッド原型に密着させる。ぴったり密着させるためには、楊枝なども利用しよう。

次に油粘土の表面には、ちゃんと剥離剤を塗る。これをやっておかないと、粘土がシリコンに付着して綺麗にシリコン型が起こせない。ほいく粘土のようにシリコンに付きにくい粘土もあるが、シリコンは粘土と接触すると劣化するので、これを防ぐためにも剥離剤は不可欠だ。剥離剤は色々とあるようだが、筆者はフローリング用のワックスを使っている。なお間違っても粘土原型には剥離剤を塗布してはいけない。粘土ヘッドが溶ける可能性があるし、また結果としてキャスト・ヘッドの表面が汚れたような仕上がりになる。

次に最初に取ったシリコン型にも、その上からシリコンを流し込む前に、表面にちゃんと剥離剤を塗っておく。シリコンは固まってからも、他の液状のシリコンと容易にくっついてしまうので、最初のシリコン型の表面に剥離剤を塗らないと一体になり、出来上がりが大きなシリコンの固まりになってしまって、粘土原型を取り出すことは不可能になる。

最後が、どこまで行っても付いて回るヘッドとボディ・ネック部分のジョイント部だ。当然ながら綺麗に首の穴の中もシリコン型を起こすためには、穴の中にもシリコンを流し込まなければならない。しかし下図のように穴の中に前後半分づつシリコンを流して、前後の型を取ることは原理的には可能でも、実際には止めておいた方がよい。試してみてもよいが、筆者の経験から絶対にうまくいかない。

で、穴の中をどのようにシリコン型に起こすかだが、まずヘッドの前半分をシリコン型に起こす際に、下図のように首の穴の部分は丸ごと開けておいて、穴の中までシリコンを流し込んでしまう。この時、先に穴の中にシリコンを流し込んでおいてから、他の部分にシリコンを流すようにすれば、完璧だ。

すると、次に下図のように、後ろ半分をシリコン型に起こす際には、穴がふさがった状態になっている。。

なお、なぜ穴の内部をヘッドの後ろ半分の一部としてシリコン型に起こすかというと、シリコン型を穴から抜き出す際に下図のようにやや無理がかかるので、できるだけ高さと凸凹のない後ろ半分の一部とした方が失敗する危険が少ないのである。

余談ながら、シリコンは柔らかいので首の穴の入り口に凹凸(テーパー、逆テーパーなどと呼ぶ)があっても、穴の中から問題なく抜き取ることができる。だからといって、思い切り抜いてはちぎれる可能性があるので、やはり慎重に少しづつ抜くことが肝要だ。

最後の注意は、ダボの作成だ。これは前後のシリコン型を合わせた際に、ずれが出ないように、互いに凹凸を造っておいて、はめ込む方法だ。具体的には、最初に油粘土の土台にペンキャップのようなもので穴をいくつも開けておく。するとできあがったシリコン型には対応した出っ張りができる。次にもう一方のシリコン型を起こすと、こんどは対応したへこみができあがる。これにより、シリコン型同士を合わせた際にずれないのだ。

図1/2/3

なおシリコンの使い方などは、シリコンの説明書を参照して欲しい。

■キャストの注入

こうしてシリコン型ができたら、いよいよシリコン型を合わせてキャストを注入する。しかし、手許のシリコン型にはキャストを流し込む口がない。そこでシリコン型にキャスト注入口を開けてやらなければならない。

ヘッドの場合は、頭頂部からキャストを流し込むのが理にかなっているので、下図のように頭頂部からラッパ型に切れ目を入れる。前後のシリコン型の切れ目がぴったり合わないといけないのだが、これは片方のシリコン表面に水性ペンで切れ目の形を描いて、もう一方のシリコン型に合わせると、ペンのインクが写って同じ形が転写される。後は、その線に沿って切り取ればよい。

ここで注意するのは、耳のように上向きの部分だ。キャストは上から注入されるので、当然ながら上向き部分は空気が貯まってキャストが行き渡らない。そこで、下図のように耳の天辺から空気穴を切り取ってやる。空気穴も前後のシリコン型でぴったり一致しないといけないので、前述の方法で水性ペンを使って転写させてやる。

次は、前後のシリコン型をぴったり合わせる。そしてこれがしっかりと密着するよう、下図のようにゴムバンドなどで縛る。

ここで注意したいのは、シリコンが柔らかいため、強いゴムバンドなどで留めると、下図のように、どうしても長手方向に強い力が掛かる。つまりヘッドの場合、顔が細くなったりする。ちょっと位は、まぁいいが、最悪の場合、首の穴が変形してボディにちゃんと接続できなくなる可能性もある。

そこで筆者は、下図のように2枚の板と工作用のクランプを2つ使って余分な力が加わらないように注意してシリコン型を合わせている。ここまで気を使う必要は普通はないが、完全を期すなら、やはり創意工夫が必要な部分だ。

最後は、キャストを流し込む。なお、できるだけたくさんの複製を取りたければ、キャストを流し込む前に、シリコン型の内面に剥離剤を塗布しておいた方がよい。キャストを打つと、確実にシリコン型は劣化していく。剥離剤は、この劣化をできるだけ遅らせ、シリコン型を長持ちさせるために必須だ。ちなみに筆者はシリコン系のスキーウェア用防水剤スプレーを使ってたりしているが、ホームセンターなどでシリコンスプレーを探せば結構あるので試してみて欲しい。

写真

キャストの使い方については、各製品の説明を参照して欲しい。

注意するのは、シリコン型の隅々にまでキャスト剤が行き渡るように、必ず注入後、シリコン型を揺すったり、叩いたりすることだ。またキャストは、湿気に触れると気泡ができるので、必ず脱水剤を併用しよう。そして、キャストはすぐに固まるので、とにかく手早く作業する点も大事だ。

キャストが完全に固まったら、シリコン型を外して、キャスト・ヘッドを抜き取る。ここは、急がず、慌てず、慎重にだ。

なお、できあがったヘッドには彩色をするわけだが、地色(肌色)はキャストに混ぜておくことで、彩色の手間を省くことができる。一般に、できあがったヘッドに対して表面を磨き、下地剤(サーフェサー)をスプレーして、それから彩色するのが理想なので、地色を付けておいても意味はないのだが、面倒くさければ、最初からキャストに肌色を付けておいて、特に下地処理もせずに、目と髪、口を彩色しても構わない。キャストに混ぜる着色剤だが、市販のプラ用カラーで構わないが、キャストとの相性などもあるので、試行錯誤が必要だ。

■着色

前項でも触れたが、理想的には、まずシリコン型から抜いたキャスト・ヘッドのバリやらを切り落とし、表面をサンドペーパーで綺麗に磨き、気泡をパテや火であぶって溶かしたプラスチックで埋めて、下地剤を塗布し、またサンドペーパーで磨き、下地材を塗布し... と、これを何回か繰り替えし、その上にスプレー(普通はエアブラシ)で丁寧に何層にも彩色したい。特に肌色は、いきなり筆塗りすると、結構嘘っぽくなるので、是非ともスプレーを使って自然な濃淡を出したい。しかし、個人で楽しむだけなら、いきなり筆で彩色しても全然構わない。キャストはプラスチックなので、市販のプラ用カラーなら何でも使える。

■装着

できあがったヘッドをボディ・ネック部分に押し込んで装着すれば、完成だ。

■後藤式カスタムヘッドジョイント

ヘッドの作り方は、これまでの説明で大体想像できると思うが、後回しにしていた、ボディ・ネック部分とのジョイント構造はどうしたらよいのだろうか? その答えの1つが、後藤式カスタムヘッドジョイントだ。ただし大仰な名前が付いているが、大したものではない。少し工作が好きな人なら、しばらくは悩んでも、結局は思いつきそうな、コロンブスの卵的アイデアとも言える。

前述の通り、粘土原型を造る際にボディ・ネック部分とのジョイント構造を造る上で、手で作業すると、1)綺麗に円形の穴を開けられない、2)穴の内壁表面をスベスベに仕上げられない、3)ネックとの接触部分の構造を綺麗に造作できない、という3つの問題がある。後藤式カスタムヘッドジョイントは、この3つの問題を解決する手段なのだ。

まずホームセンターなどに行って、直径21mmのアクリルパイプを買ってくる。これを下図のようにヘッドの高さで切り落とす。

次にホビー用のドレメル/リューターで内側に2種類の切れ込みを削る。この時、パイプを万力などで固定しておくと理想的だ。

これでOK。これが後藤式カスタムヘッドジョイントだ。簡単でしょ。このジョイントは、1)完全な円形の穴である、2)穴の内壁がスベスベである、3)ネックとの接触部分が前述の2つの目的をある程度達成する構造となっている、点で満足できるはずだ。下図を参照して欲しい。

このジョイントを使って、前述のヘッドの制作ステップの最初のステップに戻り、ジョイントの回りに粘土でヘッドを盛りつけていけばよい。

注意するのは、パイプの上端を埋める際に、粘土を詰め込みすぎないことと、その表面をできるだけスベスベにしておくことだ(下図参照)。

このジョイントの利点は、他にもあって、ヘッドの中の空洞部分が大きいので、比較的ヘッドが軽くなる。さらにヘッドの高さ分の穴となるので、Elite Brigade以外にもオリジナルGI Joeボディにも装着できる(下図参照)。

■終わりに

Elite Brigadeボディには、黒人もあるので、黒人フィギュアも簡単に作れるぞ! なお、大抵の人形のネック部分の構造は、サイズが違っても似たり寄ったりなので、ジョイントに使うパイプの径や肉厚を変えることでいくらでも応用が利く。さぁ、こうしてできたヘッドをElite Brigadeボディに装着して、みんなでカスタムフィギュアを楽しもう!

以上

戻る

(c) 1999 - 2001 Kappa Lab.