「ちょっとお父さん聞いてよ」リビングに入ってきた娘が、またも唐突に切り出す。
「誕生日にデジタルフォトフレームをもらったじゃない?」独り言のように話しだす。もらったじゃない、と言っているが、そんな話は聞いたことがない。
「フレームが黒いやつなのよ」
「あぁ、デジタルフォトフレームってフレームが白か黒だよな」とりあえず、話を合わせてみる。「白か黒一色なら、どんな写真でも違和感がないからだろう」
「黒一色って、でも写真が重くなるのよね」不満げだ。「白をくれればよかったのに」
「なるほどな。写真に黒い縁取りって、ちょっと暗いかもな」
「そうよ! 私の写真はみんな明るいお日様の下で撮ったものばかりだから、黒いフレームが合わないのよ!」
「かと言って、交換してもらうわけにもいくまい」
「だから、最近はしまったまま」
「もったいないなぁ」
「しょうがないじゃん。あっ!」何かよからぬことを思いついたらしい。「だったら、お父さんにあげるから、お父さん白いフレームのを買ってよ」
「えぇ!?」四つ角でいきなり当たり屋に当たられた気分だ。
「お父さんは、暗い写真ばかりとっているから、黒いフレームでいいじゃん」俺の写真は暗かったのか?
「だったら、写真にフレームをつければいいじゃないか?」とにかく、話をそらしていくしかない。「写真そのものにいろいろなフレームをつければ、デジタルフォトフレームが白だろうが黒だろうが、もう関係ないだろう」
「写真にフレーム?」興味を持ったようだ。「どうやるの?」
「いろんなソフトがあると思うが、おれはImageFramerというのを使っている」画像ファイルにフレームをつけるソフトは、確かにいろいろあって悩むが、今のところ、ImageFramerがお気に入りだ。
「聞いたことないけど、どこがいいの?」
「フレームが額縁風のデザインなんだよ」マックを取り出して、見せてやる。「おもちゃっぽいかわいいフレームをつけるソフトもあるけど、ImageFramerは絵画の額縁みたいだから、高級な感じなんだ」
「へぇ」自分で、デザインを変更し始めた。「たしかに高級な感じになるね」
「こうやって、それぞれの写真にあった額縁を付ければ、黒いフレームでも関係ないだろ」
「うん、背景が黒い壁みたいで、かえって格好いいかも」ニコニコだ。
「じゃ、問題解決だな」
「う〜ん、白いのを買ってもらった方が楽だったけど、まぁいいわ。これでやってみる」
これで一件落着、ってわけにはいかなかったのは、また次の機会に。