DSDは本当に良い

最近は、音楽はほぼiPhone 5で聴いていて、それで大きな不満もないんだけど、時々アナログ盤を大きな音で鳴らしたいと思うことがある。
と言っても、もう配線もしていないでかいコンポを引っ張り出して来るほどの気力もない。
最近ではハイレゾ音源の入手も簡単になっているので、いっそハイレゾ対応のポータブルプレイヤでも買おうかなと思って色々と調べているが、
AK240とかCalyx MとかDSDをネーティブ再生できるポータブルプレイヤは10万円からととにかく値段が高い。
かといって、DSD->PCM変換ではDSDの良さは半減してしまうから安いポータブルプレイヤを買ってもしょうがないしなどと考えていて、ふとKorgのMR-1のことを思い出した。
私のMR-1は、2年前くらいにハードディスクエラーが出るようになり、すぐに起動しなくなってそのまま放置してある。
ディスクエラーだけなら、パソコンにつなげてフォーマットし直す手があるが、起動しないので何もできないのだ。
でも、エラーが出てから起動しなくなったというのは、まずディスクが古くなって不良セクタが出始めて、同時にバッテリが古くなって起動ができなくなったと想像される。
ならば、Korgに送ってバッテリを変えてもらえば起動するようになり、その後フォーマットすれば使えるようになるのではないか、と思い立った。もちろんハードディスクは消耗品であり、これからも不良セクタはドンドン増えるだろうけど、とりあえずフォーマットさえできれば使い続けられるはずだ。
どっちにしろディスク容量が20GBしかない製品だから、でかいDSDファイルを詰め込んで本格的に使うことはできない。お気に入りの音源だけをコピーしておいて、時々高音質で聴いて満足できればそれで良い。
というわけでKorgに送ったところ、まずあちらの環境で起動はするということだ。ただしディスクエラーは起きている。フォーマットすれば使えるようになると思うが、バッテリが古いので交換は必要ということだった。
送料込みで1万2千円弱とDSD対応のポータブルプレイヤを新たに買うより遥かに安い金額だったので、早速修理してもらって今日戻って来た。
まずは、手もとのDSDファイル(ジャズとクラシック)をいくつかコピーしてモニタリングヘッドフォンで聴いてみたが、まさにアナログ盤と変わらない音が鳴る。
もう10年以上アナログ盤の音を聴いていないので本当に同じ音なのか判断はできないのだが、脳のどこか奥深い部分の記憶が呼び起こされたような気がして、理由もなく涙があふれそうになった。
これはどういう反応なのか不思議に思いながらしばらく曲を聴いていて、ふと「あぁ、これは音楽で感動した時の反応だ」と思い至った。
気付けば、圧縮音源を聴くようになってから、ついぞ音楽で感動したことなどなかったのだ。
DSDが、あの魂を揺さぶられる感覚を呼び戻してくれたのだ。
ここまで書いておいてなんだが、私は、MR-1が本当にDSDをネーティブ再生しているのか確信はない。DSD録音できるんだから再生だってできて当たり前だと思うし、Korgのサポートで確認してもネーティブ再生しているというので、そうなんだろうとは思う。
でも、DSDネーティブ再生できるポータブルプレイヤが10万円以上するのに、実売4万円以下(後継機のMR-2の場合)というのは安すぎるような気がするので。
そこでDSDファイルをWAV 24/192とWAV 24/96というファイルに変換して、聴き比べることにした。
あらためてWAVファイルを聴いてみると、WAV 24/192もWAV 24/96もハイレゾの名に相応しく、MP3やAACに比べると音に余裕があり、ポータブルプレイヤで聴く分には十分よい音だと言える。多分、CDあるいはWAV 16/44.1を聴いても良い音だと思うだろう。
しかし、DSDを聴くと違うのである。まず音が滑らかであり、上にも下にも余裕があって余韻まで楽しめる。また透明感があるというのか、音の向こう側の様子が分かる気がする。文字にすると表現が難しいが、ピアノの場合に近い鍵盤遠くの鍵盤の違いが分かると書けば少しはニュアンスが伝わるかも知れない。
しかし、いかんせんDSDは音源が少なすぎる。特に個人的には懐かしいジャズ、ロックやポップスの名盤の音源が欲しいのに、現状はほとんど存在しない。かろうじて
e-onkyoにジャズの名盤が少しあるくらいだろうか。
こうなると、手もとに二百枚位あるアナログ盤から何とかしてDSD音源を作れないかなどという浅はかな考えも湧こうというものだ。